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2005/09/27

「台湾」行④7月7日

 産地取材の2日目。この日、我々は、ある野望を企図していた。その日の、いつもと同じメニューの朝食時。
「いやぁ、昨日のマッサージはよかった。あれがなかったらキツかった。身体軽いもん。ぐっすり眠れたなあ」
「でしょ? 志村けんがTVで紹介するだけのことはあるでしょ」
「だねぇ。……で、そうすると、だ」
「はい?」
「〝次〟はやっぱ呑みたいよな」
「ああ、Iさんの……」
「そうそう。電話してさ」
「でもねぇ……ここまでの流れを考えてみてくださいよ? 毎晩呑んでるんですよ? 今日だけ呑まないってことがありますか?」
「うーむ。そりゃそうだよなあ。でも、まぁさすがに連日ってのはよくないからさ、断るってのもテじゃないか?」
「Cさんのお誘いを断る!? ……Nさん、云ってくださいね」
「う、うん……。まぁ、その、でたとこ勝負ということで」

 空港へ向かう途中。「それとなく」Cさんに訊いてみると、「今日は台南のほうへ行きます。夕方になったら向こうで食事をして、それから夜遅い便で帰ってきましょう。ハハハ」との返事。つまりがっちりスケジューリングされているというわけだ。チラリとNさんに目をやると、「ああ~そうですかぁ……」としか云わず、いっこうに断る気配がない。まぁ、そりゃそうだな。

 例によって仕事の話は省略。台南の「なんちゃって日本料理店」で夕食。丸く回転するテーブルに火を通した刺身が出てくる店だった。何度も云うようだが、オレたちは台湾に来ているのである。こんなバッタもんを食べたいとは思わない。
 席上、N氏がコソッと話しかけてくる。
「行こうぜ」
「行くって……Iさんが紹介してくれるっていう、おねーちゃんがいる店に? これから?」
「当然」
「これから? ほんとに?」
「昨日の伝からするとさ、空港で飛行機を待ってるとき、Cさんは電話をかけたりだとかフラフラどっか行っちゃうだろ?」
「よく観てますね。それで?」
「その間隙を縫ってIさんに電話するのさ」
「……スケベの一念、岩をも通す」
「何とでも云え。どうだ?」
「帰りの便が台北に到着する時刻にもよりますね。あんまり遅いなら、行くのはやぶさかじゃありませんが、Iさんに来いとまでは云えないでしょ」
「うん。だから電話で店の場所だけ聞き出す」
「いいでしょう」
「OK」
 〝商談〟成立。

 やっぱアレだな。前日のマッサージが効いたな。元気になっちゃった(笑)
 台北空港に到着後、「ホテルまで送りますよ。ハハハ」とおっしゃるC氏を丁重に断り、「まぁたまには我々だけでタクシーにでも乗ってみたいので」とか何とか誤魔化した。
「場所は?」
「林森北路」
 台北市内は、ほぼ碁盤の目状に道がはしっており、大きな道路の一本いっぽんに名前がついている。したがってタクシーに乗ったら、通りの名前を告げれば(あるいは通りの名前を書いた紙を運転手に見せれば)目的地に到着できるという仕組みになっている。バスなんかよりよほど便利だ。ただし安全面さえ考慮しなければ。なかには悪徳運転手がいないでもない。見分ける方法はただ1つ。「走っているタクシーをつかまえる」こと。基本的に駐停車して客を待っているタクシーは避けたほうが得策なのだそうだ。
 「林森北路」というのは大歓楽街として有名な通りで、日本で云えば新宿の歌舞伎町みたいなとこだ。日本人向けの店も数多い。2日目の夜、酒豪のおっさんに連れて行かれた店も、ここにある。
「Iさんの話だと、林森北路の、角にマッサージ屋がある横通りを入って少し行った先の、〝B〟っていう店がいいんだそうだ」
 と、N氏。うん、まぁそれならすぐ見つけられそうだ。だが……タクシーが林森北路に着いてみて驚いた。
「マッサージ屋だらけじゃねぇかっ!!」

 映画的表現をするなら、ここでIさんのセリフがオフで(画面の外から)聞こえてくるわけだ。ちょっとエコーかかってたりしてね。
「角にマッサージ屋がある横通りを入って少し行った先の、〝B〟っていう店……」
 悪いことはできない。N氏と私は、角にマッサージ屋がある横通りを片っ端から観てまわり、〝B〟の看板を探し求めた。……が、小一時間ほども歩き回った結果はネガティブ。
「お午まわっちゃいましたね」
「くそ~~」
「まぁ、ひょっとすると明日ってことも…」
「ここまでの流れからして最後のチャンスだったとは思わんか?」
「思います。明日は……例のおっさんだし、あさっては帰るわけだし」
「とはいえまさかこの時間にIさんに電話するわけにもいかんしな」
「じゃあ……帰ります?」
「いや、それじゃなんかまるで莫迦みたいじゃないか」
 ここまでの流れがすでに莫迦みたいだと思うが。
「なんでもいいからどっかで呑んでいかないか?」
「お腹すいてるんですか?」
「ツマミなんかなんでもいいよ。呑もうって云ってんの」
「ああ、ヤケ酒ね」

 通りのそこらにあった小さな汚い店に入る。私は「日本の」ビール、N氏は「キツい」紹興酒を注文する。何より店内でタバコを吸えるのが嬉しい。店内ったって、入口あけっぱなしだが。
「なんだね、人のカネで連日連夜呑み放題、使ったカネといやぁ昨日のマッサージくらいなもの。これで文句云っちゃ罰があたるが……隙間がないっ!」
「ついでに喫煙所もない」
「いや、それはオレはいいけど。タバコやめたら?」
「世界中で最後の一人になっても吸います。だいたい今の時代、吸い続けるほうが根性すわってると思いませんか?」
「そりゃそうだが……いや、そういう話じゃなくて隙間がない」
「確かにね」
「もちろん仕事で来てるんだから仕方ないけどさ、普通はこういうのって自由時間というか観光というか、そういう時間帯が設けられるものさ」
「らしいですね。私は経験ありませんが」
「にもかかわらずこうなってるってことは……」
「ひとえにCさんの性格でしょうね」
「だよなあ。マジメなんだろうけど……」
「いつぞやIさんが云ってましたよね。Cさんってワガママなんですよ」
「ワガママって云っちゃかわいそうだが……自分の提案に絶対の自信をもっていて、それに従わないと機嫌が悪くなる」
「それを世間ではワガママっていうんじゃないかなあ」
「悪い人じゃあないんだ」
「それはそうですね。その悪くない人にここまでしてもらってると、心苦しいってのもありますし」
「なんかね、連日連夜おごってもらってると人間が堕落しそうでね」
「……であれば、私からひとつ、提案があるんですが……」
「ん……?」

 最後の夜(も、どうせ呑みになるだろうから)の宴席は、我々で費用をもたないか――これが、私の提案だった。
「なるほど。どうせここまでカネ使ってないしな。うん、いいよ。そうしよう」
 到着初日、我々はお互い日本円にして8万円ほどを「元」に交換していた。マッサージは日本円にして3,000円もかかっていないから、ほとんど丸々残っていることになる(私に限って云えば、ほかにもまだ日本円を残していた)。2人あわせてこれだけあれば、まぁかなりな宴席をもてるだろうってことだ。前にも云ったが、台湾では主催者がまとめて費用をもつのが一般的。ただし、それは人数と単価にもよるのだが……。

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