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2006/07/19

映画館に行こう

 「ALWAYS~三丁目の夕日」を観たのは、飯田橋のギンレイホールだった。都内に数少ない名画座の1つだ。現存する都内の名画座というと、たぶん池袋の新・文芸座(一度廃館になって後に復活した)、シネマヴェーラ渋谷、高田馬場の早稲田松竹、目黒シネマ、新橋文化、ラピュタ阿佐ヶ谷(ちょっと意味が違うか)、下高井戸シネマ、三軒茶屋中央、三軒茶屋シネマ、浅草新劇場、浅草中映、浅草名画座、町田のまちえいグリーン・ローズのほかは、ギンレイホールがあるだけだろう。一頃よりは盛り返した感があるが、まだまだ…。あ、そうそう。今は「準名画座」(時間帯を区切ってモーニングショーやレイトショーで旧作を上映する映画館)という区分があって、これに当てはまるのがシネマアートン下北沢と銀座シネパトスくらいか。
 昔は一番館(ロードショー館)と名画座の間に二番館という区分があったような気がする。つまりロードショーが終わった後で「つなぐ」ための小屋だ。昔よく「ロングラン上映」といった場合、この二番館での上映期間も含めていた。さらに時間が経って旧作になってからかかるのが名画座だ。だから決して作品の善し悪しではなく、単に時間が経ったという意味で「名画座落ち」という言葉がある。当然、ロードショー当時より金額が安いわけだから、カネがなかった学生の頃はよく「名画座落ちを待って」映画に行っていた。ビデオがまだ高価だった頃の話だ。

 映画の興行権には3つある。第1に当然のことながら映画館での上映権。第2にTVでの放映権。これにはデジタル放送も含まれる場合とそうでない場合、あるいは他の権限の範疇に入る場合もあるが、まぁここではどうでもよい。第3にビデオやDVDなど記録媒体の販売権だ。この3つの興業権が揃うことを「ALL RIGHTS RESERVERD」という。よく映画のチラシかなんかの隅っこで見たことあんでしょ?
 映画の配給会社などが作品を買い付ける場合、洋画(外国映画)は比較的簡単だ。いや、比較の話なのであって何も職業をけなしているわけではないので念のため。というのも、要するにまず映画館に足を運ぶ人の数から予測できる予想興業収入を分母に、原価率がどの程度か知らないが分子に買い付け額がくるわけだ。3つの興業権それぞれ考え方は同じである。
 日本映画の場合は、確かに興業だけ考えれば上記の通りだが、制作まで考えると事情が違ってくる。まず映画館での興業だけ考えた場合、実のところ予想興業収入などどうでもよい。映画館はそれぞれ独立した経営をしているわけだから、新作映画が作られるたびに、その映画をかけるか否か、かけるとすれば何週間かを計算する。で、それにしたがって映画の上映フィルムをレンタルするのである。したがって興業主側からすれば、いくつの劇場でどれくらいの長さの期間、上映されるかが、分母になる。故に日本映画を制作まで考える場合、少なくとも最初は、これが出発点だ。逆に云うと、劇場の数が減れば減るほど、映画の制作費は厳しくなるという構造になっている。
 とはいえ洋画・邦画を問わず、今はロードショー館だけでなく名画座があり、TV放映があり、メディア販売もあるから、実はさほどシビアな計算がなされているわけではあるまい。ここまでシビアな計算をせざるをえないのは、マイナーなミニシアターくらいだろう。それだってヒットしさえすればメディア化もありうるため、割合ラクになる。

 本当に厳しいのはピンク映画だ。

 誤解しないでほしいのは、アダルトビデオではなくピンク映画である。つまり最初からメディアで売ったりレンタルしたりすることを想定した作品ではなく、単に劇場にかけることだけを想定した作品のことだ。昔で云えば「にっかつロマンポルノ」なんかが有名だ。
 いま日本のピンク映画は、配給会社が、オークラ、新東宝、エクセスの3つしかない。制作会社は別にあって、ここで作った作品が3配給いずれかの系列の映画館で上映される(乗り入れも一部ある)。TVで放映されることはもちろんなく、媒体化もほとんどありえないため、映画館での上映が唯一の生命線と云っていい。したがって劇場の数の増減が、ピンク映画制作現場にとっては制作費を左右する死活問題となる。
 都内にあるピンク映画館は、新宿2館、池袋1館、上野4館、新橋1館、浅草2館、飯田橋1館の、わずか11館。調べてみたが全国あわせた館数はついに判明しなかった。都市部だけ合わせたところ34館だったから、まぁいくら何でも50館はいくまい。
 何度も云うようだが、日本のピンク映画界にとって上映館数の増減、いや減は、死活問題だ。だが6月18日、大阪でまたもや1館が閉館と相成った。ここのところ全国的にも1年に1~2館ペースで閉館に追い込まれている。
 ちょっとした知り合いがピンク女優をやってることもあって、なるべくピンク映画は観に行くようにしているのだが、残念ながら都内11のピンク映画館は、新橋と浅草の1館ずつを除くと、ほとんどホモの方々のハッテン場と化していると云ってよく、オレにはなかなか行きづらい。以前、池袋の支配人が、「私らだってちゃんとピンク映画を観にきてくれる人のために経営したいけど、実際のところホモの人たちがいなけりゃ商売になりませんからね。見て見ぬふりするしかないんですよ」と寂しそうに笑っていたのを思い出す。

 ならばピンク映画なんかつぶしてしまえ? そうかな。オレはそうは思わない。今の日本映画のスタッフの大半はピンク映画出身者だ。さすがに近年は減ってきたが、それでもピンク映画が日本映画スタッフの養成工場であることに変わりはない。どうかすると俳優だってピンク映画出身者は重宝されたりする。実はピンク映画の命脈を絶つことは、日本映画の屋台骨を削る行為なのではないかとすら思う。

 最近は復興してきたか、名画座はむしろ少しずつその数を増やし始めているような気がする。ギンレイホールに久しぶりに行って思ったが、非常に館内が綺麗になっていた。リニューアルされたり新たに出来たりする名画座も、綺麗な小屋が多い。昔のキタナイ劇場なんか見あたらない。文芸座にしてからがそうだ。ピンク映画館にはありえない現象だ。でも――行ってみて思ったのだが、今の名画座って館内は綺麗だしスタッフも態度がよくなってるが、客の態度がなっていない。上映中にウロウロ動き回るなよ。モゾモゾ動くなよ。ましてや携帯ならすなよ。エンドロールの最中に席を立つなよ。オレは割と集中するタイプで、気にならないはずなのだが、そのオレにしてからが気になるってのは相当のもんだぞ。

 でも、それでもいいから名画座には行ってやってくれ。何もピンク映画に行けとまでは云わないから、名画座くらいには行ってやってくれ。頼むから。

 なんでかというと、オレは密かに日本映画が大好きだからだ。頼むよ。

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