« ラッシュアワー | トップページ | 轟轟戦隊ボウケンジャーTHE MOVIE~最強のプレシャス~ »

2006/08/18

THE有頂天ホテル

97

 すでにDVDが出ているにもかかわらず飯田橋・ギンレイホールにて鑑賞。DVDでなく小屋で観てよかった。でもDVD購入決定。だってこれは絶対メイキングやコメンタリー観たいもん。

 同じようにすげー人数の役者が出ていても、どっかの「妖怪大戦争」なんかとはえらい違い(いや、比べるのも失礼な話か)。ただ話の筋としては、いわゆるグランドホテル形式+ビリー・ワイルダーのテイストってとこか。つまり、かなり基本的な、ベタな話の展開になっている。そこを堂々とやっちまうんだから大したもんではあるんだが。
 グランドホテルってのは、劇中で堂々とネタばらししてるんだけど、1950年代(だったかな?)のグレタ・ガルボ主演の作品で、ホテルの1部屋を舞台に繰り広げられる短編連作。したがってこういう話の展開のさせ方を後にグランドホテル形式と呼ぶようになった。ビリー・ワイルダーは「アパートの鍵貸します」や「お熱いのがお好き」といったシチュエーション・コメディの傑作を監督した人。もとは舞台の戯曲家でもあり、「情婦」(検察側の証人)など戯曲をベースにした作品でも有名。何だってビリー・ワイルダーかっていうと、本作の脚本・監督である三谷幸喜が大ファンであることを自認していることをあげなくても、明らかに本作(に限らないが)はワイルダーのテイストが感じられる。
 ちなみにワイルダー自身は「ニノチカ」などの監督エルンスト・ルビッチに多大な影響を受けたことを認めており、ワイルダーのオフィスには常に「ルビッチならどうする?」と書かれた額が飾られていたそうな。2000年、長時間のインタビュー集「ワイルダーならどうする?」が刊行された。翌年、その日本語訳版が刊行された際、三谷幸喜がロサンゼルスのワイルダーのオフィスを訪ね、ごく短い時間だったが対談が実現している(この模様はTVで放送された。ワイルダーのオフィスにはちゃんとあの額が飾ってあったぞ)。ワイルダーが亡くなったのは翌2002年のことだったが。

 さて、繰り返すが本作はグランドホテル形式+ワイルダーテイストがベースになっている。ただしグランドホテルそのままに短編連作を重ねるのではなく、登場人物1人ひとりの話を個別に描いておき、互いに複雑に連関させつつ、冒頭からしつこく登場人物が口にするカウントダウンパーティへと最終的に収斂させるというワイルダーっぽい手法を重ねているわけだ。
 非常に数多くの役者が登場するにもかかわらず、プロットを破綻させず、しかも個別の登場人物の話もきちんと成立させている。このあたりの手腕はさすがというほかない。三谷幸喜という人はTVドラマの脚本だとシリアスも描くくせに、映画としての脚本は圧倒的にシチュエーションコメディだけに徹している。自身が監督した作品は「ラヂオの時間」、「みんなのいえ」に次いで3作目にあたるわけだが、途中ちがう人に監督を任せた作品もやっぱりシチュエーションコメディだった。このへんはやっぱり三谷幸喜自身が舞台出身である点から来ているのかもしれない。余談だがサンシャインボーイズ最終公演の会場に貼ってあった「未定・次回作」はやっぱり観たかったなあ。何っつってもタイトルだけで笑えるのだ。「リヤ玉」だもん。
 ただし、残念ながら冒頭から30分すぎまでは登場人物の紹介に費やさざるをえない構造的欠陥を抱えているため、どうしてもやや中だるみに感じてしまう点があるのは否めない。まぁそこはつきものってことで。
 役者については何もコメントする必要がない。そもそも演技力に不安のない人だけを集めてきた時点で本作は成功なのである。ただキャラクター造形の点で1つだけ指摘しておくと、石井正則(アリとキリギリス)の設定が「ホテル探偵」と聴いてつい口元をほころばせてしまった。日本のホテル業界には存在しない職業(保安係みたいな名称の職業はあるが)だが、海外、特に欧米のホテルには常識的に存在する職業だ。この点に目をつけたのはさすがと云うべきだが、残念ながら日本のホテルにホテル探偵を設けた話(小説)はすでに存在する。モデルになったホテルは浅草ビューホテルだが。

 スタッフは、音楽の本間勇輔などを除けば、過去の三谷作品とは一新されている。特に撮影は「妖怪大戦争」撮影直後の山本英夫(笑)。

|

« ラッシュアワー | トップページ | 轟轟戦隊ボウケンジャーTHE MOVIE~最強のプレシャス~ »

コメント

 アヒルが出てきたときに『ア○ラック』と本当につぶやいたのは私です。

 「プロデューサーズ」と比較してしましたが、確かに比較にならないですね。片や舞台ミュージカルを映画化するにあたって「映画ならでは」の要素を持ち込んだ作品と、片や舞台劇をほぼそのまま映画化し、ほぼリアルタイムで進行する作品。まずもって話の転がし方からしてこれだけ違うと、同じコメディでも比較するのはちょっと…。まぁチャップリンとジョン・ベルーシを比べるようなもんか(違うって)。

投稿: Smith | 2006/08/26 22:32

こんにちは、MOです。

最近とみに映画を観る機会が増えたので、こちらも公開間もなく観てきました。
感想からいえば、『爆笑を期待すると肩すかしを食らう』映画だったと思います。きっと貴兄のように数多の映画を観てきている人ならくすぐりの数々を見つけることが出来たんだろうなあ、と思います。

しかし、驚かされるのは脚本の緻密さで、出てくる人、起きる事件、事柄すべてがエンディングに繋がっていく作りに思わず膝を打ってしまいました。凄い、っていう感じですね。
キャストはいうまでもなく実力派ばかりなので安心してみていられた、というのは同感ですし、最後のYOUさんの歌はミュージカルを見ているような感じでしたし。
アヒルが出ていたときに『アフ○ック』といいたくなったのはMOだけかなあ?

先にも言ったとおり爆笑を望むべくもないストーリーなので、途中は『なんのこっちゃ?』という所がなきにしもあらずでしたがココは我慢のしどころかな?でしょう。そういう意味で言えば、『プロデューサーズ』の方がMOとして、面白い作りだったなあ、と思いますが、比較するにはおかしいかもしれませんね。
でも傑作でした。

投稿: MO | 2006/08/21 15:24

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: THE有頂天ホテル:

« ラッシュアワー | トップページ | 轟轟戦隊ボウケンジャーTHE MOVIE~最強のプレシャス~ »