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2006/08/06

宇宙からのメッセージ

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 28年前の東映特撮作品。DVDにて鑑賞。

 スターウォーズ(Episode4 New Hope)の出来に驚愕した日本人は多かったはずだ。日本映画界でも同様である。ことに特撮シーンの出来には驚かされた。そこで日本映画界は思ったわけだ。日本にだって特撮はある。ゴジラをはじめとした特撮技術は、かつて世界一だったはずだ。よーし、日本特撮技術の総力を結集してスターウォーズに匹敵する特撮映画を作ってやろう、ということになった――ことになっている。しかし、現実にはどうも違っていたらしい。スターウォーズの日本公開を目前にした便乗作品というのが今や定説になっている。何故なら「妙に」急いで作られた作品だから。

 まず特撮の出来は雑である。いやもぉひどいもんだ。当時ようやく日本に入ってきたばかりのMCC(モーション・コントロール・カメラ)を使いたくてしょうがないらしく、あちこちに多用しているのだが、「吊り」ができない場面では仕方なく合成になっている。何のためのMCCか。
 話は要するに南総里見八犬伝。宝玉の代わりが「リアベの実」である。でも最後は敵基地内にある動力炉をトンネルくぐった小型機で撃つ。やっぱスターウォーズじゃん。
 出演者はJAC(当時)総出演のほか、ビック・モローを起用するなどそれなりの話題づくりはしているが、何というか特に敵役の衣装なんかがどうみてもスーパー戦隊シリーズみたくなってしまっているので、チャチな印象は拭いきれない。加えて脚本がどう考えても時代劇調なのは、メインの撮影所が太秦だからか?
 宇宙船などのデザイナーに石森章太郎(当時)を起用している点は評価できる。特に冒頭と最後に出てくる帆船型の宇宙船のデザインはいかにも石森章太郎らしく、美しい。しかし恐らく石森章太郎にデザインを依頼した理由は、単に仕事が早いからだろう。デザイナーはほかにひおあきらなど。
 何より時間をかけられなかったであろう点が、科学的な考証・設定の面だ。このときの後日談を、設定に参加した(ことになっている)野田昌弘が証言している。ご存知ない方のために云っておくと、野田昌弘という人物は海外のSF小説を1,000冊以上翻訳し、自らもSF小説を発表するおじいちゃんである。一般的には元フジテレビ社員、後に制作会社の日本テレワーク社長となって、「ひらけポンキッキ」などを手がけた。ガチャピンやムックの生みの親にあたるのが野田昌弘というわけだ。その当時、野田昌弘は日本SF作家クラブの会長を務めていたのだが、東映から「今度、日本でスターウォーズみたいな特撮映画を作るので、考証で協力してくれないか」と依頼され、その直前にスターウォーズをアメリカで観ていたため、一も二もなく快諾する。が、彼はすぐさま快諾を後悔することになる。脚本はもう書き上がっていて、撮影にも入っている。にもかかわらず「マスクだけつけて宇宙服も着ず、命綱もつけずに宇宙遊泳する」とか「宇宙空間でベイルアウト(戦闘機などの脱出行為)」といったシーンがふんだんに盛り込まれていて、全ては手遅れだったのだ。後に野田昌弘は「かろうじて宇宙空間で宇宙船の修理作業をしているシーンで『ハンダで溶接しろ』というセリフを削除するのが精一杯だった」と語っている。非常に恥ずかしくなった野田昌弘は、東映に「カネはいらんからオレの名前をスタッフのクレジットから外してくれ」と依頼したのだが、時すでに遅し。いきなりオープニングから「原案」のなかに「野田昌弘」の名前がデカデカと出てしまうことになる。公開初日の夜、野田昌弘宅に一本の電話が入る。「やい、なんだあの映画は!? オレは日本SF作家クラブ辞めるぞ!」。小松左京である。

 出演者のうち3人の若造(真田広之とガイジン2人)が乗る宇宙船「リアベ号」がある。このデザインも石森章太郎だ。この機体は両翼に伸びるアーム部分で小型機2機と「合体」するのだが、アームが伸びる際にジリジリジリジリとベルが鳴る。確かリアルタイムで観ていた当時は、このシーンが非常に恰好よく見えたものだが、今みるとまぁダサいことダサいこと(笑)

 これだけテンコ盛りの作品だが、興業収入はさほどでもなかったらしく、膨大な製作費赤字を回収するため、特撮シーンをバンク(使い回し)にしたTVシリーズ「宇宙からのメッセージ銀河大戦」へ派生していくことになる。ちなみに主演は真田広之である。

 さんざんケナしたが、点数は意外なほど高い。それはそうだ。確かに特撮はひどいし考証に至っては子ども騙し以前。話は南総里見八犬伝だが……その話、ちゃんと成立しているのである。プロットに破綻がない。最初から最後まで徹頭徹尾一本の軸が通っている。考えてみれば当たり前のこの行為が、今の破綻だらけの若い監督あるいは脚本からすると、非常に貴重なことのように思えて、つい点数が高くなってしまった。ちなみに脚本は松田寛夫、監督は深作欣二。深作欣二はよほど不満に感じていたのか、後に薬師丸ひろ子主演で本当に里見八犬伝を映画化してしまう。ちなみに相手役は真田広之である。

 つい「日本沈没」直後だからこういう評価になった。全く逆の例であって、いかに脚本が大切かということだろう。

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