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2006/11/09

おあとがよろしいようで

 過日、知人の母親に不幸があって、通夜に列席してきたのだが、その際、ある会社の社長に面白い話をきかされた。
 この社長さん、親から仕事を継いだんだそうだが、何せ通夜の席での話、自分の父親が死んだときの話になった。

 ――死んだらさ、やっぱ財産分与って話になるじゃない? オレのほかに弟(だか妹だか。忘れた)が1人いて、そこで半分に割ればいいんだけど、するとだいたい1人あたり数千万円になる。ところが弁護士が出てきて言うには「もう1人います」だと。「は?」「もう1人います」「なんのことですか?」「あなたにはお兄様がいらっしゃいます」「……」つまりお袋がオレを生む前、親父は妾に生ませた子がいるってわけね。仕方ないんで、その「まだ見ぬ兄貴」ってのに連絡をとって、青森の黒石にいたんだけど、会いに行ったのね。とりあえず財産分与の手付けってことで100万円だけ現金もって。JRの黒石駅で待ち合わせたんだけどね、確か週刊朝日かなんかを手に持ってますって目印を決めておいたんだけど、そんな必要なかったよ。ホームに降りたらそこに「親父がいる」んだもん。オレより親父に似てるんでびっくりしちゃったよ。
 んで、どっか喫茶店かなんか入って話に入ったんだけど、その兄貴が言うことにゃ、遺産はいらねぇってのね。自分は妾の子だし、別にカネに不自由してるわけでもないから、遺産はそちらでご自由にしてくださいって、自分で署名捺印した遺産放棄の紙を差し出すのよ。いやもぉ、出来た人だと思ったね。けどさ、さすがにオレもガキの使いじゃないんだから、はいそうですかってわけにはいかない。せめてこの100万円くらいはもらってくんないかって切り出したんだけど、いらもらえん、いや受け取れの押し問答の末に、兄貴は折衷案を出してきたわけさ。「確かにあなたのメンツも立たないだろう。では半分だけいただけないか。それでこの話は終わりにしよう」。なるほど。まぁそれならってことで半分だけ渡して帰ってきたわけさ。
 んで家に帰ってかみさんに「渡してきたよ」って。

 あの……社長? 確か半分って……?

 うん、ぜんぶ呑んじゃったよ。この話さ、未だにかみさんにはバレてないんだ。

 落語みたいな話である。

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