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2007/01/08

日本以外全部沈没

 見逃した作品をDVDでカバーしようシリーズ。結論から云って大失敗だった。

 小松左京が(本人に云わせると9年の歳月をかけて書き上げた)「日本沈没」を発表した年、ベストセラーを祝おうと作家仲間たちが集まった酒宴の席上、酔った故・星新一が「日本が沈没して、日本人が世界中に散らばっていくと、いじめられるんだろうな。でも、日本以外全部沈没したら、世界中の人間が日本に押し寄せることになるわけだ。その時は…」と話し出したとき、すかさず同席していた筒井康隆が「私がそれを書く!」と名乗りをあげたそうな。果たして、小松左京と星新一に了解をとった筒井康隆は、わずか1週間で本作の原作「日本以外全部沈没」を書き上げ、発表した。その年の星雲賞(ファンの投票で決まるSFの賞)は長編賞が「日本沈没」、短編賞が「日本以外全部沈没」だったとか。
 昨年、映画「日本沈没」がリメイクされた際、云わば「公式な」便乗企画として「日本以外全部沈没」の映画化がスタート、本家より遅れること2か月でロードショーにこぎ着けたが、DVD化は本家より先んじた。

 本作のスタッフリストをみると、「原典」に小松左京がクレジットされ、その次に「原作」筒井康隆とある。さらに何故か「監修」として実相寺昭雄がクレジットされており(まさか遺作ではなかろうな? だとしたら不幸にすぎる)、「特撮監督」は佛田洋。これで期待するなというほうがおかしい。どうかしている。
 キャスティングもいちいち笑えるし、TV版「日本沈没」の村野武範が首相役、映画版旧作「日本沈没」の藤岡弘、が防衛庁長官役で登場するあたりも秀逸。

 題名の通り日本列島以外の陸地すべてが沈没してしまった世界が舞台。唯一の陸地である日本へと世界中の人々が殺到してくる。対する日本人はどんどん傲慢になっていく。確かに、最初のうちは面白かった。だが徐々に、鼻についてくる。それはどんどん膨らんでいき、やがて耐えられないほどの不快感になっていく。

 原因は、明らかに監督(河崎実)と脚本(河崎実と右田昌万の共同)にある。ウィキペディアには「原作世界にあるナショナリズムや人種差別に対する逆説的な強い批判精神や人類は自然に対しては無力であるという世界観には忠実に描かれているが、監督・脚本を務めた河崎実によってより過激な描写が用いられているために、原作の世界観を理解していない観客に対しては作品に対する誤った印象を与えかねない要素も有している」とある。映画は映画として独立した作品である以上、原作を読破しているか否かは関係ない。「原作の世界観を理解していない観客」とは何か。そういう尊大な態度がまさに本作の不快感につながる。逆に云うと、「原作の世界観を理解していない観客」には「誤った印象を与えかねない」程度の演出力・脚本力しかない、ということだろう。露見も甚だしいというものだ。ちなみに云っておくと、オレは原作を読んでいるはずだが内容をほとんど憶えていない。

 ブラックユーモア? そんなことは分かっている。逆説的な描き方も分かる。しかし人さまからカネをとって娯楽を見せる商売にしては、悪フザケがすぎる。批判するだけならサルでもできよう。

 近年、邦画が元気になってきた。しかしそれは、総体としての作品の質の向上を意味していないのではないかという懸念がある。邦画が興収を稼ぎ、制作者にとって作りやすい環境になってきたのは結構だが、それによって勘違いした莫迦どもが総体の質を落としてしまうのは我慢ならん。
 オレのなかで本作は、「デビルマン」「キャシャーン」に次ぐワースト作品となった。点数表記にマイナスを設けておけばよかったとつくづく後悔している。

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