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2007/02/11

隠し剣 鬼の爪

85

 見逃した作品をDVDでカバーしようシリーズ。

 藤沢周平原作・山田洋次監督シリーズ2作目。前作同様、複数の藤沢原作を1つにまとめている。本作では「隠し剣」シリーズの「隠し剣 鬼の爪」と、人情劇「雪明り」の2短編。脚本も前作同様、 山田洋次と浅間義隆の共同脚本。

 幕末の東北を舞台にしているところも前作と同じ。方言からやはり庄内あたりと分かる。海坂藩の平侍である片桐宗蔵(永瀬正敏)は、母親(倍賞千恵子)と妹・志乃(田畑智子)、女中きえ(松たか子)と暮らしていたが、母親が亡くなって後、志乃は宗蔵の同僚(吉岡秀隆)のもとへ嫁ぎ、きえも商家に嫁いでいき、家のなかが火の消えたようになる。3年後、街中で偶然きえと再会した宗蔵は、その変わり果てた姿に驚く。てっきり嫁ぎ先で幸せに暮らしているものとばかり思っていたら、嫁ぎ先の姑にこき使われたあげく、寝込んでしまっていたのだ。怒った宗蔵は強引に商家からきえを連れ帰り、離縁させる。ようやく病から回復したきえとともに、安らかな毎日が戻ってきた矢先、藩に事件が起こる。宗蔵と同じ戸田寛斎(田中泯)門下生だった狭間弥市郎(小澤征悦)が、謀反を起こしたのだ。当然のことながら藩の家老(緒形拳)は、直属の上司(小林稔侍)を通じて討伐役に宗蔵を指名する。

 ……と、ここまではモチーフといいストーリー展開といい、前作とそっくり同じ。ここから変わってくるのが本作の妙である上、タイトルの説明にもなっている。(以下ネタバレ)宗蔵と弥市郎は同じ戸田門下生だったわけだが、宗蔵だけが戸田寛斎から奥義である「隠し剣 鬼の爪」を伝授されていた。宗蔵との果たし合いにあって弥市郎は奥義で切れと迫るが、宗蔵は断り、直前に寛斎に教えられた「実践的な技」で弥市郎を倒す。ところが直後、弥市郎の妻(高島礼子)から夫を助命してくれるよう家老に頼み、了解を得たと聞かされる。弥市郎の妻は騙されたのだ。報告に戻った宗蔵は家老に問い質すが、家老は逆ギレ。そこで宗蔵は、家老に奥義を使う。すなわち柄どめの小剣を袖口に忍ばせ、一撃で心の臓を突き引き抜く。「隠し剣 鬼の爪」とは、暗殺技術だったのである。タイトルは「必殺」のほうがよかったんじゃないか?

 画面のトーン、話の展開は、前作同様、非常に良い。難点はキャスティングである。いや、例えば吉岡秀隆のぶしゃぶしゃする感じはあれはあれでいいし、前作で圧倒的な存在感を放った田中泯は、本作でも出てくるだけで空気を変える。緒形拳や小林稔侍の悪人ぶりも見事の一言。チョイ役だが田中邦衛のウルサさもいい。次作「武士の一分」にも出てくる笹野高史の使い方も間違っていない。
 だが、本作はやはり根底が剣技ものにあるのだとしたら、殺陣の基本ができていない永瀬正敏ではうまさが伝わってこないのだ。小澤征悦も同様である。それから松たか子は、健康的すぎる。特に前半の病に伏せっているシーンでは、全然病人に見えない。
 永瀬正敏・松たか子という組み合わせは、ちょうど前作の真田広之・宮沢りえと引っ繰り返すと成立しないか。

 そこだけが非常に心残りな作品。そこだけ減点しといた。
 あ、本作になってようやく気がついたのだが、音楽はともに冨田勲だった。非常に良い。何故なら劇中、まったく音楽が聞こえなかったから。映画音楽として成立している証拠だ。

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