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2007/03/28

ハッピー・フィート

 25日、東京・有楽町は丸の内プラゼールにて鑑賞。いつぞやのサロンパスと同じビルだな。

 先に断っておく。本作は、普通に考えてよく出来た作品ではあるのだが、ただ1点だけがオレの倫理コードに触れた。故にオレの評価としては最低サイアクである。それどころか非常な憤りを感じている。そこのところを説明するためには、あえてネタバレなど知ったことか、という姿勢をとらざるをえない。通例であればそうした場合、エチケットとして文字を反転させておくわけだが、それもしない。それくらい憤っているわけだ。

 最終警告である。以下、ネタバレを多分に含むので、嫌な方は退出をお薦めする。

 さて、まずは褒めておこう。

 以前にも書いたかもしれないが、オレはミュージカル好きである。ミュージカルというだけで、無条件で高評価になると云ってもいい。ましてや上質なミュージカルならなおさらだ。
 監督のジョージ・ミラー(『マッド・マックス』)は当初、普通に実写でペンギンのミュージカルをやるつもりだったそうだ。ところがペンギンに踊らせるのは不可能と悟り(気づけよ)、フルCG化を決断した。しかもダンスシシーンは実際にプロのダンサーたちに踊らせ、モーションキャプチャーで上からCGを重ねるという手法をとった。こうして、ピクサーでもディズニーでもドリームワークスでもない、新たなCGアニメーションが出来あがったというわけだ。
 メインのダンスシーンは見事の一言。ものすごい数のペンギンたちが一斉に「Dance! Boogy Wonderland!」とやるのである。ジョージ・ミラーはCGでしか表現できない手法を随所に取り入れており、カメラワークもその1つ。ともかくグルグル回る。ヒッチコックの「めまい」以上だ。水平に回るだけでなく垂直にも、ランダムにも回る。しかもピンをはずさない(当たり前だ)。観ていて爽快感がある。

 本来ミュージカルというものは、科白を歌と踊りに置き換えるため、さほど複雑なストーリーを物語ることができない。しかし本作では、そこを乗り越えている。先の見えない展開。しかもスリリング。途中までは。

 舞台は南極。ペンギンたちの「帝国」では、それぞれの「心の歌」で互いに求愛しあうのが子孫繁栄の大原則。メンフィス(声=ヒュー・ジャックマン)とノーマ・ジーン(ニコール・キッドマン)という美声の持ち主である両親の間に生まれた主人公のコウテイペンギン・マンブル(イライジャ・ウッド)だったが、どういうわけかマンブルは音痴。ペンギンにあるまじきペンギンだった。ただしマンブル、卵から孵るとき足から出てきて「もごもご君」(マンブル)と名づけられただけあって、タップダンスの素養があった(ダンスシーンではタップの神様であるセヴィアン・グローバーが演じた映像にCGを重ねているそうな)。
 タップが踊れても歌えなければペンギンではない。最近どうにも魚が穫れなくなってきた元凶がパタパタ足(ハッピー・フィート)にあると糾弾され、マンブルは「帝国」を追い出されてしまう。
 帝国のペンギンと異なりマンブルのダンスを気に入ったアデリーペンギンの5人組(うち1人の声がロビン・ウィリアムス)とともに、魚が穫れなくなった原因を究明する旅に出たマンブル。途中、アデリーペンギンたちの間で「教祖」とあがめられていたイワトビペンギンのラブレイス(これもロビン・ウィリアムス)がメンバーに加わり、旅を続けるうち、ついにマンブルたちは魚が穫れなくなった原因をつきとめる。エイリアン(人間)たちが巨大な船で魚を乱獲していたのだ。

 ここまではいい。非常にスリリングな展開だし、アデリーペンギンの5人組も楽しい。マンブルの名と「マンボ!」との語呂合わせも見事だ。だが……

 原因を究明しただけで飽き足らなかったマンブル、アデリーペンギンたちやラブレイスとも別れ、1人で「魚を獲らないようエイリアンを説得」しに向かう。だが、気づけばマンブルは水族館に囚われの身。絶望の淵に立たされたとき、マンブル唯一のコミュニケーションの手段が意味を持つ。

 帝国に帰ってきたマンブル、タップダンスで人間を説得できたと説明する。だが、そんなマンブルの背中には、何やら奇妙な機械が据えつけらえていた。発信器だ。マンブルに先導されたテイコクペンギンたちが踊り始めたとき、ヘリに乗った人間たちが現れ、「踊るペンギンたち」を目の当たりにする。そして人間たちも踊り出し、なおかつ世界中にそのニュースが伝わる。やがて「魚を獲るのはやめよう」という話になる……。

 ふざけるな

 おまえらアメリカ人(ジョージ・ミラーはオーストラリア出身)はいつもそうだ。何だって自分たちの都合ばかりよそに押しつけたがるのか。ペンギンを救うために魚を獲らない? そりゃ魚を食べてる民族に対する嫌がらせか? しかもペンギンに発信器までつけて? 生態系が壊れるぜ。
 こんなことを言い出すと、必ずおまえらアメリカ人は云うんだろうな。「ダサいこと云うなよ。踊ればいいじゃないか」。そうやって善人面して手前勝手な理屈を押しつけるわけか。しかも子ども向けの、CGの、ミュージカルでだ。ミュージカルを愚弄するのもいい加減にしろ。

 腹がたって仕方ない。確かに予告編を見たとき、今年オレが最も期待していたのが本作だったのは事実だが、それだけに憤りは深い。
 原因の一端は脚本にあろう。何せジョージ・ミラー、ジョン・コリー、ジュディ・モリス、ウォーレン・コールマンの4人による共同なのだ。そりゃプロットも破綻しよう(実際何か所か合点のいかないシーンがある)。

 手法としてもオリジナリティあふれる作品であるだけに非常にもったいない。断っておくが作品の出来としては決して悪いものではない。文句なしに「A+」でもいいくらいだ。だが、ただ1点だけが原因で、評価は最低に堕ちた。
 そりゃあオレは環境問題を解決するためなら人類を皆殺しにしたほうが早いと考える人間だ。それにしたってこりゃあんまりじゃねぇか。

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