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2008/01/10

グッド・シェパード

 だからもう忘れたってば。11月の終わり頃に……どこで観たんだっけ? 有楽町か池袋だったと思う。

 重厚である。かなり重厚な話である。ちょっと「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を思い出した。あちらはマフィア、こちらはスパイという違いこそあるが、ともに長々とアメリカの暗部を描くという点では共通している。

 主人公、エドワード・ウィルソンは戦前、エール大学に進み、エリートたちの秘密結社スカル&ボーンズに参加する。スパイ疑惑のあった教授を調査した点を評価されてビル・サリヴァン将軍にスカウトされ、OSS(Office of Strategic Services =戦中の軍戦略諜報局)に入る。後に敵国(主にKGB)から「マザー」の通称で恐れられた優秀なスパイの誕生である。
 エール大学に在籍中のエドワードは、耳の不自由な女性ローラとつきあうが、ラッセル上院議員の娘マーガレット(通称『クローバー』)を妊娠させたことで破局、結局はクローバーと結婚する。だがOSSに進んだエドワードは、結婚後すぐに妻を置いてヨーロッパへ渡り、大戦中の諜報活動の最前線に就くことになる。
 戦後、OSSはSSU(戦略諜報部隊)やCIG(中央情報グループ)などの変遷を経て(このへんは描かれない)1947年、現在のCIAへと改組する。
 つまり本作は、1人の諜報員の生涯を通して黎明期からキューバ革命後までのCIA内部を描いた、長大な悲哀の物語だ。

 構成としては、1961年4月17日の「ピッグス湾事件」(革命後のキューバ、ピッグス湾に、亡命キューバ人部隊が政権転覆を目論んで上陸するも失敗した事件)の指揮を執ったエドワードに情報漏洩疑惑の目が向けられるという「今」の状況を発端に、過去をたびたび振り返りながら、やがて回想がリアルタイムに追いついてから一挙にクライマックスである最大の悲劇へと突き進むという、王道のプロットになっている。

 主人公エドワード・ウィルソンに、マット・デイモン。かなり無理があるが好演はしていると思う。しかし、本作のキャスティングの妙は主人公以外にある。エドワードの妻クローバーに、アンジェリーナ・ジョリー。エドワードをOSSにスカウトするビル・サリヴァン将軍に、ロバート・デ・ニーロ。クローバーの父でスカル&ボーンズOBのラッセル上院議員に、キュア・デュリア(『2001年宇宙の旅』『2010』のデビッド・ボーマン)。エドワードの先輩で後のCIA長官、ピッグス湾事件でエドワードに疑惑の目を向けるフィリップ・アレンに、ウィリアム・ハート。OSS時代のエドワードが現地採用した部下レイ・ブロッコに、ジョン・タトゥーロ(『トランスフォーマー』のシモンズ捜査官)。学生時代のエドワードに調査を依頼する後のFBI捜査官サム・ミュラックに、アレック・ボールドウィン(『レッド・オクトーバーを追え』のジャック・ライアン)。エール大学でのエドワードの担当教諭フレデリックス教授に、マイケル・ガンボン(故リチャード・ハリス亡き後の『ハリー・ポッター』シリーズでダンブルドア校長)。エドワードがロンドンで知り合うMI6諜報員アーチ・カミングスに、ビリー・クラダップ(『M:i:Ⅲ』)。半カストロ派のキューバのマフィア、ジョゼフ・パルミに、ジョー・ペシ。そして……ほとんどカメオ出演的扱いながら、エドワードの父、トマス・ウィルソン(この役名、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で黒人市長候補と同名だが、何かスラングでもあんのかね?)という重要な役にティモシー・ハットン(!)。

 デ・ニーロの監督作なんて、オレは初見(実際は2作目)なのだが、どうなることやらと思っていたが、意外なほど真正面から取り組んでいたのには驚かされた。それと何といってもエリック・ロスの脚本が素晴らしい。そういえば本作のアプローチは、「フォレスト・ガンプ」のそれとも似ている。それから陰影の使い方が惚れ惚れする撮影(だってカメラほとんどフィックスなんだぜ。どっかの誰かと違ってブンブン振り回したりしないの。それだけで今は新鮮)は、名手ロバート・リチャードソン。オリバー・ストーンやマーチン・スコセッシと組むことが多いこの人を、たかだか2度目の監督作にオファーできたのだから、ここはむしろデ・ニーロを褒めておくべきなのだろう。マーセロ・サーヴォスとブルース・ファウラーの音楽は「聞こえなかった」。ということは名映画音楽ということだ。美術にジャニーン・オップウォール(『シービスケット』)、衣装にアン・ロス(!)。しまった。泣きそうだ。

 グッド・シェパードとは、聖書に云う、「良き羊飼い」のこと。

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