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2008/06/23

パズル

 ようやく今クールのドラマの話が書けると思ったら、先週最終回を迎えた。

 いろいろ批判もあるようだが、堤くんの悪ふざけを排除した蒔田光治脚本の実力を計るには好材料と云っておこう。要するに石原さとみ版「トリック」ではあるのだが、あそこまで悪ふざけがひどくないのと、1話完結にこだわっている点が良否双方ある。
 石原さとみの演技は安定している。あれだけフザけた役をこなす力量は、もともと備わっていたのか、それとも「花嫁とパパ」で鍛えられたか。

 石原さとみ演じるところの主人公・鮎川美沙子は、卓越した受験指導の腕をかわれて近辯高校(近松大学付属辯秀高校の略)に赴任してきた英語教師。若く見えるが、実は三十路である(フザけてるでしょ?)。英語教師のくせに実は英語が苦手。変なダジャレで英単語を憶えようとするが、これが意外な場面で役立ったりする。外面(そとづら)は非常に良いが、いったんポジションが下だと認識した相手に対しては徹底的にタカビーになる。カネに汚い。意地汚い。
 ――要するに石原さとみの演技如何なのだが、これが意外なほど成功している。

 話は、ほぼ全話パターン化されている。
 「トリック」と全く同じ推理コメディといったところで、超常現象らしきものよりミステリー的なトリックに重きが置かれている。まずそのミステリー部分の導入があって、近辯高校の授業風景に入るのは毎話一緒。生徒たちに、変なダジャレで英単語を復唱させるのが鮎川だ。生徒側に、レギュラーの3人がいる。同じ剣道部に所属する同クラスの
今村真一(山本裕典)、神崎明(木村了)、塚本善雄(永山絢斗)の3人だ。最初の1人はこのところあちこちで見る。2人目は「のだめ」でゲイ役をやってた。役者名と同姓同名(字が違う)の知り合いがいるのでちょっと嫌だ。3人目はしらん。
 この3人のうち今村が、どういうわけか毎回、必ず近隣の桜葉女学院の3人の女の娘たちにたぶらかされる。どういうわけか毎回、必ず宝探しの類の話を持ち込んでくるのだ。毎回同じ喫茶店で、毎回必ず今村が話している向こうにいるデブな女がデカいパフェだかを食っている。
 近辯高校というのはエリート校なので、3人は頭がいいと思いこんでいる。対して桜葉女学院の松尾ゆうこ(岩田さゆり)、高村みちる(佐藤千亜妃)、和田ひとみ(朝倉あき)の3人は、ちょうど鮎川を小さくしたような性格で、毎回必ず近辯高校の3人をそそのかしてお宝を奪おうとするのだが、毎回必ず失敗する。理由は簡単。毎回の宝探しに、毎回必ず鮎川が同行するから。何せカネに汚いので、儲け話を横取りしようとするわけだ。
 毎回必ず絶海の孤島や人里離れた山奥が舞台になって、そこで宝探し的なことが展開するもんだから、つまり常に密室状態で話が進む。毎回必ず探偵やらルポライターやらいう人たちが現れて、たいてい1人は殺される。暗号やトリックが出てくるが、どういうわけか鮎川が妙なダジャレで暗号を解いてしまう。無事お宝は見つかるし、先祖伝来のどろどろした話も解決するのだが、鮎川は必ず最後に失敗してお宝を手に出来ずに終わる。
 毎回、必ず同じ刑事、鎌田虎彦(塩見三省)が現れて事件の後処理をするのだが、こいつは鮎川の本性に気づいておらず、毎回必ず近辯高校3人組の頭をはたく。学校に帰ってくれば、やはり鮎川の本性に気づいていない数学教師(剣道部顧問)大道吾郎(金児憲史)が毎回必ず近辯高校3人組の頭をはたく。ついでに近辯高校3人組は、毎回必ず鮎川に「あたしの貴重な休みを台無しにしやがって」という理不尽きわまりない怒られ方をする。

 だいたいこんな感じ。
 問題なのは1話完結という手法だ。「トリック」のときは複数完結が定番だったから、本作ではあの冗長さをカバーする役にはたっている。しかし残念ながら、それだけに説明が不足していたり、いくらなんでも苦しい理由づけだったり、ギャグが笑えないという場面がそこかしこに見られてしまうのはいただけない。それと、確かに石原さとみの演技はかうが、キャラクターの建て方として、「トリック」で云うところの阿部寛のような存在が本作には欠けている。ひょっとすると近辯高校3人組がそのポジションなのかもしれないが、だとすると力量不足だしキャラクターが描き切れていない。描くなら1話完結は成立しない。

 実に惜しい、のだ。

 全10話のなかで、さすがによくまとまっている話も出てくる。第7話がそうだ。落語家の独演会に向かう話。その落語家が云うには、その噺は門外不出の噺。何故かというと、内容に財宝のありかを示す暗号が埋め込まれているから。ただしその噺、一度聞けば死んでしまう。噺が始まると、聞いていた噺家の兄弟たちが次々に死んでいく。
 これだけ技巧が必要な話なのに、落語家は1人(桂福団治)しか出ておらず、ほとんどが素人の役者だけで話を回していく点が素晴らしい。特に風間杜夫の語り口はなかなか説得力がある。それにオチだ。結局は風間杜夫がトリックを使って兄弟たちを殺していたのだが、これが実に巧妙で、物理的な証拠が一切ない。さぁ逮捕できるものならしてみろと終わる。それ自体が一遍の噺のようで、なかなかに唸らされた。

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