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2008/06/14

大いなる陰謀

 いろいろ批判はあるみたいだが、こういうエンターテイメントを楽しめないようでは、未熟な証拠である。

 舞台1。将来の大統領候補と目されるアーヴィング上院議員(トム・クルーズ)が、自室にTV報道記者ロス(メリル・ストリープ)を招じ入れ、アフガニスタン情勢を一挙に覆す最新の作戦情報をリークしようとする。その作戦は、すでに数時間前に発動されていた。

 舞台2。アーヴィングの野望と提案に基づき、作戦を展開する軍の部隊。そのなかにはロドリゲス(マイケル・ペーニャ)とフィンチ(デレク・ルーク)という2人の若者がいた。2人は戦闘中、誤って敵の真っ直中に放り出されてしまう。

 舞台3。ある大学の教授室。マレー教授(ロバート・レッドフォード)は、優秀だが世間から無関心でいようとする学生、ヘイズ(アンドリュー・ガーフィールド)を相手に、緩やかな説得を試みようとしていた。教授は、かつての教え子、ロドリゲスとフィンチの軍への志願を止められなかった過去を打ち明ける。

 話は、ほぼこの3場面だけを通して描かれる。一応戦闘シーンがあるにはあるが、前編通してほぼ会話だけで成立している作品である。そこで描かれるのは、問いかけである。座していていいのか、おまえらの無関心は放置しておいていいのか。
 非常にスリリングな会話だ。会話こそ物語の基本であることを再認識させられた。これほど興奮するストーリーテリングはほかにない。こういうのをエンターテイメントというのだ。

 だが、残念ながら明確な欠点が2つ。1つは、この会話だけのエンターテイメントを受け容れられるか否かは観客側の成熟度に頼るとしても、「問いかけ」というアプローチからして仕方なかったことなのかもしれないが、非常に中途半端な終わり方、すなわち何ら結論を出さないまま終わってしまった点に、大いなる不満を覚えたこと。エンドタイトルが出たとき思わずスクリーンに向かって「……で?」って訊いちゃったよ。
 もう1つは、全てを俯瞰した上で、本作が問いかけるものはともかくとして、具体的な主張内容は決して容れられないということ。要するに、根底にあるのはアメリカの傲慢な正義にすぎない。そこを喝破してしまうと、非常にみすぼらしい作品になってしまうという極端な欠点があるのだ。

 だがまぁ、こういうアプローチもあるのだ、という意味では出色の作品である。トム・クルーズがMGMと組んで再設立した新生UA(ユナイテッド・アーチスツ)の第1号作品として本作を選んだのも分かる気がする。脚本はマシュー・マイケル・カーナハン。監督は云わずと知れたロバート・レッドフォード。原題の「Lions for Lambs」は、第一次大戦ソンム川で英仏連合軍を相手にしたドイツ軍2将軍の以下の会話に基づいている。ルーデンドルフ将軍「イギリスの若い兵隊たちはライオンのように勇敢に戦った」、ホフマン将軍「その通りだが、勇敢な彼らが羊のように無能な指揮官のもとに戦ったのも事実だ」。

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