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2009/06/13

椿三十郎

 CSを録画して鑑賞。確かもうGW明け頃だったと思う。

 云わずと知れた黒澤明監督作を森田芳光がリメイク。オリジナル作の成立過程が複雑だ。まず当時、黒澤組のチーフ助監督だった堀川弘通が監督作を撮るにあたり、黒澤明が脚本を書いた。これが山本周五郎「日日平安」を原作にしたもの。ところが内容が地味だったためか、この企画は実現しなかった。その後、「用心棒」の続編的作品の製作を打診された黒澤が、「日日平安」を思い出し、菊島隆三、小国英雄の協力を得て大幅に改変。主人公を「用心棒」の主人公である椿三十郎に置き換えて撮影した。もちろん全くの続編ではなく(時代設定がまるで異なる)、今で云えば外伝かスピンオフみたいな作品なのだが、何より主人公のキャラクターと、「用心棒」から続く、血しぶきが噴き出す殺陣とが注目され、ヒットした。44年後のリメイクにあたる本作は、黒澤版「椿三十郎」の脚本を一切加筆訂正することなく採用、単にカメラワークや演出だけを変えるという、やや実験的な色彩の濃い作品となった。

 とはいえ、何せ黒澤版「椿三十郎」の脚本が出色なものだから、最初から傑作になることは分かっている作品でもある。オリジナル作品の血しぶきが噴き出す殺陣は、今風と云うべきか、カット割を細かくする殺陣と呼べない殺陣に切り替えてある。ま、そこはご愛敬だ。にもかかわらず、何かこう、本作が垢抜けなく見えてしまうのは何故か。考えてみれば簡単である。オリジナル作と脚本が全く同じで、演出にもさほど難がないとすれば、残るは役者の演技力以外のなにものでもないではないか。では犯人捜しをするために、前作と本作とでキャスティングを比べてみよう。

 黒澤版森田版
椿三十郎 三船敏郎 織田裕二
室戸半兵衛 仲代達矢 豊川悦司
井坂伊織 加山雄三 松山ケンイチ
千鳥 団令子 鈴木杏
腰元こいそ 樋口年子 村川絵梨
見張りの侍木村 小林桂樹 佐々木蔵之介
寺田文治 平田昭彦 林剛史
保川邦衛 田中邦衛 一太郎
河原晋 太刀川寛 粕谷吉洋
守島隼人 久保明 富川一人
守島広之進 波里達彦 戸谷公人
関口信伍 江原達怡 鈴木亮平
八田覚蔵 松井鍵三 小林裕吉
広瀬俊平 土屋嘉男 中山卓也
竹林 藤原釜足 風間杜夫
大目付菊井 清水将夫 西岡徳馬
次席家老黒藤 志村喬 小林稔侍
睦田夫人 入江たか子 中村玉緒
城代家老睦田 伊藤雄之助 藤田まこと

 誰が悪いか分かった人?「正解」は織田裕二である。三船敏郎が演じた役に素人を充てる無神経さよ。殺陣も観ちゃいられないが、それより何より、あの豪快なキャラクターが学芸会芝居になってしまっている。仲代達矢が演じた役を務めた豊川悦司もややぎこちないのだが、そんなものは吹っ飛んでしまうくらい、織田裕二がヒドい。
 脚本に助けられたせいもあるのだが、非常においしいとこをさらっていくのが佐々木蔵之介。それから最後の最後に藤田まことをキャスティングしたセンスは見事。

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