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2009/09/27

大空のサムライ

 友人に借りた(というか1年ほど借りっぱなしだった)DVDにて鑑賞。

 タイトルは大戦中の撃墜王を指す。日本海軍航空隊の坂井三郎(最終階級は中尉)が記録した撃墜数は、実に64機(出撃200回超)。まさに「大空のサムライ」にふさわしい戦歴だが、本作の冒頭、いきなり坂井本人が現れ(現在は他界)、「大空のサムライとは私の事ではない。空で戦った多くの敵味方を問わない兵士たちのことなのだ」と否定している。

 本作が素晴らしいのは、単なる戦記ものになっていない点だ。一応、日本がまだ勝っていた時期とはいえ、坂井以下のパイロットたちは、何よりも「生還する」ことをこそ最重要命題と考える。そこに、非常な人間くささが込められている。
 かつて大戦の戦勝国側は、日本のパイロットたち(に限らないが)を悪の権化と考えていたが、本作の原作によって、同じ人間であることを思い知らされる。故に本作の原作は、多数の国の言語に翻訳されている。

 本作の場合、「岸壁の母」を制作した大観プロによる企画のため、やや大時代がかった印象は拭えない。監督の丸山誠治ときたら、このテの戦争映画の権化みたいな人物だから、そのへんは割り引いて考える必要があろう。ただし、普通の戦争映画っぽさが微塵も感じられないのは、やはり原作の力量と言えるだろう。
 加えて、坂井を演じた藤岡弘(この時点では『、』がついていない)以下のキャスティングが重厚だ。若い頃の志垣太郎、平泉征、地井武男、大谷直子が出てくるのも驚かされるが、平田昭彦の存在感はどうだ。加えてこの種の作品の定番である「丹波哲郎」という部品を、定番通りに配置している。
 劇中、捕虜から帰還した一式陸攻の隊員たちが、単独爆撃を命じられる。つまり死んでこいという命令だ。坂井たちは何とか零戦での援護を申し出るが、丹波哲郎は首を縦に振らない。ただ、こう云ってのけるのだ。
「おまえさんたち、話をまともにもってくるからいけないんだ。ところで、あー、おまえたち、今日の午後の訓練はどうなってる?」
「飛行訓練ですが」
「飛行訓練おおいに結構。訓練先は君たちに任せる。訓練ともなればだなあ、機関銃なんかもこうバリバリ撃ってもらわにゃならんわけだから、弾薬は沢山もってくよーに」

 名シーンといえばラストだ。藤岡弘が奇跡の生還を果たす場面。このモノローグが実にいい。人間はどうしようもない生き物かもしれないが、同時に愛すべき生き物でもある。そこに共通するのは生存への執着だ。生命「欲」と云ってもいい。そういったことを象徴する、実にいいシーンに仕上がっている。

 知らなかったのだが、本作は川北紘一の特技監督デビュー作でもあるそうな。確かにラジコンを使ったという空中戦は見事。

 あ、そうそう。これだけ褒めちぎってる割に評価が低いのは、オレがもともと戦争映画なるものに価値を見いだしていないからにすぎない。

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