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2012/06/07

ヒューゴの不思議な発明

 現在篇。今年3月、豊洲ららぽーとにて鑑賞。原題は「Hugo」

 オレのなかにはジンクスというか約束事がある。「オスカーを獲った作品を劇場で観ない」だ。何故か。ハズレであることが圧倒的に多いからだ。1年以上経った後、地上波などでやってれば観る。で、「ああ、やっぱり」って思うわけだ。つまりカネ払ってみたら絶対損するというラインが、このオスカー云々なわけだ。最近はオスカーでノミネートされた段階で日本公開されていることも多い。で、獲りそうだけど観たかったら、ムリヤリ受賞前に観に行く。その程度の約束事ではあるのだが…。

 今回、その禁を犯してしまった。

 第84回アカデミー賞に11部門でノミネートされ、撮影、美術、視覚効果、音響編集、録音の5部門で受賞した。授賞式は2月。その翌月に観てるわけだから、明らかなタブー破りである。結果は……自ら課したものとはいえ、やはりジンクスは正しかった。

 確かに映像は素晴らしい。特に冒頭の3Dならではシーンは、ジェイムズ・キャメロンを超えている(本人もそうコメントしている)。また古い古い映像、例えば「月世界旅行」や「イントレランス」など、懐かしいというより歴史的に貴重な映像を再び目にすることができた点もいい。しかし、だ。肝心のストーリーがダメダメ。正直云ってプロットが破綻してしまっている。一応つながってはいるのだが、互いのエピソードの連関性があまりにもご都合主義に陥りすぎている。

 ブライアン・ セルズニックの同名原作を「ネメシス/S.T.X」や「ラストサムライ」などのジョン・ローガンが脚本、マーティン・スコセッシが監督、と訊けば、誰だって期待しちゃうじゃないか。

 原作というか、何でもスコセッシに映像化させることを前提に書かれた原作は未読なので何とも云えないが、しかし振り返ってみれば総体のプロットは素晴らしいのだ。それを何だって、あんな分かりにくい組み立てにしてしまったのか。
 フランスはパリのリヨン駅のなかで暮らす孤児のヒューゴ(これは英語読み。場所がフランスなのでフランス語読みすればユゴー。ビクトル・ユゴーのあのユゴーだ)の視点から描くのは間違っていない。その行動から解き明かされていくのは、ジョルジュ・メリエスの生涯だ。

 ジョルジュ・メリエス。19世紀末に生を受けた「世界初の職業監督」である。もともとはマジシャンであり劇場経営者だったが、途中から映画製作に乗り出す。自ら撮影もし、役者も務めた。最も有名な作品はジュール・ベルヌ原作「月世界旅行」だろう。確か何度か日本のCMでもチラッと映像が使われたし、ポンキッキでカールスモーキー石井と和田アキ子が歌った曲のPVでまんま映像が使われてたからご記憶の方も多かろう。今っとなっては莫迦げた話ではあるが、1902年のサイレント映画(当たり前だ)で、「複数のシーンをつなげることで物語をつむぎ、映画にする」というのは、当時画期的だったはずだ。顔を白く塗りたくった男(これが月だ)に徐々に砲弾(ロケット)がぶつかっていく。いま観ればコントかと思うかもしれないが、どれほど最先端のCGだろうがSFXだろうが、基礎はそんなもんだ。最初に考え出し、作り上げたから偉大なのだ。自作のスタジオ(今で云えばオープンセット。ガラスハウスによって露光調整した)を作ったのもメリエスだし、多重露光、ディゾルブ(フェードアウトとフェードインを組み合わせることで実現した場面の切り替え。正確にはクロスフェード・ディゾルブ・オーバーラップ)、ストップモーションだって、メリエスがいなければ誕生していない。

 後にD.W.グリフィスが出てきて「映画の父」などと呼ばれるようになってしまうが、それ以前に映像を映画にした最初の人は、間違いなくメリエスだったはずだ。メリエスがいなければ、グリフィスは「イントレランス」をものすことはできなかったはずだから(これは日本での話だが、俯瞰撮影用のやぐらのことを「イントレ」と称するのは、この作品からきている)。

 話を戻すが、メリエスはオートマタ(ゼンマイ人形)のコレクターで、そのコレクションは死後、美術館に寄贈されるのだが、最終的に廃棄された、というエピソードがある。本作は、そのオートマタを媒介に、ヒューゴにメリエスへと辿り着かせ、そこからメリエスに生涯を語らせる、というプロットをとる。こう書くと非常に高度なストーリーテリングに聞こえるかもしれないが、残念ながらそうはなっていない。だったらもうストレートにメリエスの生涯を描いちゃえば……ドキュメンタリーになっちゃうか。う~ん。いろんな意味で残念な作品である。

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